闇と光の神 アブラクサス

服部まゆみさんの「この闇と光」を読みました

Twitterでフォローしている方がこの作品を絶賛していて、何も知らない状態で読んで欲しい、と言っていたので、背表紙のあらすじすら目を通さずに読み始めました



主役はレイア、別荘に囲われている盲目のお姫様
中世ヨーロッパのような舞台
姫、王、城下、兵士…等それを感じさせる単語が沢山出てきます
しかし、くまのプゥさんが現れたり、カセットテープが登場したり、あまつさえ夏目漱石すら出てくる…

なんかおかしいぞ…中世ではないっぼいどころかヨーロッパでもない?

なんかおかしいぞ、なんかおかしいぞ
と、どんどん読み進めて半分を過ぎた頃に、何もわからなかった物語が色付き始めます
それから怒濤の勢いで物語は終了します



ネタバレを避けて大まかなあらすじをこんな感じですかね
ここから先はネタバレを気にせず素直に感想を書いていきます


いやー!!
やられた、凄い作品ですよこれは

途中からは王でも姫でもないんだろうな、盲目だし嘘を言っているんだろうなと薄々感じてはいたけど、まさか男の子だったとは…
それはさすがに予想出来なかった
そして王もダフネも兵士も同一人物、下の部屋の喧騒は録音したものを流していただけ


とにかく想像力が試される作品ではないかと思いました


作家の原口が「王」だったとして、彼は何を考えていたのだろう
僕が思うに彼は究極の美を作り上げたかったのかなと
最初はそんなつもりではなかったかもしれないけど
美しい世界を作るために王、ダフネ、兵士を使い分け、物語を与え、音楽を与えた
でも彼は狂人ではないから、罪悪感にも苦しみながら、その狭間でそれを行っていたのかな

一番わからないのが彼で、レイア一の行間から想像していくしかない


そしてレイア、大木怜です
彼は彼女はこれからどのようにして生きていくのだろうか
盲目の9年間で女の子として育てられ、美しい世界のみを与えられて育ち、いきなり現実に放り出された
そして「王」に対しての憎愛入り交じった感情はどんなものなのか
その心の内を想像してはみるけどいまいち掴めない


恐らくはこの二人はこれから売れっ子作家として、新人作家として表向きは普通に生きていくんじゃないかなと
その一方で、親子愛とも同性愛とも言えない複雑な関係をあの別荘で築いていくのかな
そしていつか大木怜自身が、誰かのアブラクサスになる未来まで想像しました


美とは何だろうか?
常識とは何だろうか?
それぞれ何を考えて、思っているのだろうか


そんなことを考えながら何回でも読める作品だったんじゃないかなって思います

世界は自分の心が作り上げるもの
だけど心は自分だけでなく環境にも影響されながら形成されるもの
そんな風に僕は感じました


まだまだ読み込んでみたいし沢山の人の感想が気になります