「一八八八 切り裂きジャック」 読書感想文

「一八八八 切り裂きジャック服部まゆみ

読み終わりました!

 

以前読んだ「この闇と光」が本当に素晴らしかったので同じ作者さんのこの小説を手に取りました

文庫版で769ページの大ボリュームの作品でした…

連休を利用して、読み進めて、眠くなったら寝る、起きたらまた読む…ということを繰り返し、恐らく10時間くらいで読み終えたと思います

 

 

この作品は1888年のイギリスで切り裂きジャック事件を追うというストーリーになっていますが、僕は主題は柏木青年のモラトリアムではないかと感じました

旗本の息子が、当時の最先端の国に留学して、受ける衝撃はいかほどなのでしょうか

見るもの全てが新しいといった状態でとんでもない刺激ですよね

そんな刺激を自分も味わえたらいいな、と思いました

 

 

 

そしてこの小説で何より素晴らしいのはまるで自分がヴィクトリア朝時代のイギリスにタイムスリップしたかのように錯覚出来ることですね!

重厚で丁寧な描写に加えて、著者の気品溢れる文章、柏木青年を通して優雅な光と同時に闇を照らしてくれます

光と闇、これは著者の中で大きなテーマであるのかもしれません

序盤から矢継ぎ早に出てくる総勢100名以上の登場人物や、出来事はほぼ全て実在の人物、史実だそうです

怒濤の勢いで人物が出てくるので最初は読み進めるのが辛かったのも事実です…笑

当時の歴史に詳しい人が読むと更に楽しいんだろうなー

 

「エレファントマン」という存在をこの小説で知ることが出来ました

彼はどんな風に人生を送ったのだろうかという興味が沸きました

 

そして鷹原惟光です

品格に溢れる魅力的な人物で、彼に引き込まれるように小説を読んでいました

その堂々たる振る舞いに憧れずにはいられません

 

「笑顔は礼儀さ。個人的な想いで徒(いたずら)に相手を不愉快にさせることもないだろう。僕から云わせれば、甘えであり、わがままだ。」

 

この台詞が特に好きですね

 

 

服部まゆみさんの文章はとても甘美で品格に溢れていると思います

全編通して美を感じます

彼女は芸術家でもあったそうですね

2007年に59歳の若さで亡くなっているそうですが、とても惜しいです

でも何と言おうと僕は彼女を気に入りました

また近い内に服部まゆみさんの小説を読みます(^^)v